下町ロケット8話では、佃航平と佃製作所が追い込まれる内容でした。汚い手でのし上がろうとするサヤマ製作所の椎名直之の策略により、自分たちも帝国重工における地位を獲得すべく、財前道生を追い落とそうとします。危うしの佃航平と財前道生が描かれています。

下町ロケット
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佃航平と財前道生をつないでいるものとは

前半の「ロケット編」からご覧の視聴者には、最初から佃航平と帝国重工の財前道生が親しい関係にあった訳ではないことはご存じでしょう。国産ロケットを打ち上げる、しかも主要部品を全部自社開発というのが帝国重工社長・藤間秀樹の宿願であり、当然、財前もそれを承知しており、開発を勧めていたのです。その開発主任が敵方となる部下の富山敬治でした。

しかし、帝国重工の開発は成功するも、佃航平に特許取得を先に越されていたため、その扱いを巡り、佃航平と財前道生の絆が生まれていくのでした。

帝国重工側とすれば、内製化という拘りから言えば、特許を買い取ってしまうのが、一番早い道です。しかし、難色を示す佃航平に次善の策、「使用契約」で決着をつけようとした財前道生でしたが、佃を訪れた財前は製作過程と製品の品質の高さを知ると同時に佃航平という人物を知る機会を得たのです。

そこには「帝国重工」という肩書にも、物おじしない「技術開発」に深い信念と愛情をもった佃航平と、それを見極める財前道生がいたのです。

佃航平 財前道生
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目的や大義が、個人の損得をはるかにしのぐ佃航平の人間性を財前は理解していたのです。最初は「小さな町工場」と見下していた財前の父も、実は町工場の経営者でした。人間関係の奥の深さを感じますね。(この辺が池井戸作品の素晴らしいところですよね)

そんな佃航平が提案したのが、「部品供給」だったのです。特許買い取りも使用契約も、会社の方針にはそぐわないのは百も承知の財前でしたが、それを拒めばロケット打ち上げの日程には間に合いません。葛藤している時間もありません。

そこで、意を決して見事、佃製作所のバルブシステムの部品供給の道筋をつけたのです。ここに見られる佃航平と財前道生の関係は会社という組織を超えた、人間としての相手を尊重し、互いを認め合う姿です。器の大きな人間は包み込むような包容力をもち、魅力がありますよね。

 

石坂宗典と富山敬治をつないでいるもの

一方で、組織というものの中で、相反する力も存在します。組織が小さいとそれほどでもないかも知れませんが、中規模から大規模になってくると、必ず「抵抗勢力」が現れます。しかし、「反対意見」が全部ダメというものではありません。

その動機が肝心なのです。財前の部下だった富山は技術開発部の主任でしたので、佃航平にバルブシステムの特許を取得されたことを憎んでいたことは想像に難くありません。しかし、それ以前に、小さな町工場にそんな高い技術力があったことが許されるべきではないという「偏見」の持ち主だったのです。所謂、人間ができていないというか、「器の小さな」人間です。他人を認められないのです。

石坂 富山
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そこで、佃航平追い落としと、ついでに上司である財前道生の失脚を狙って策略を企むのです。そんな難癖を乗り越えて佃のバルブを載せたロケット打ち上げは成功します。

ところが、それでもまだ根に思っていたのでしょう。海外出張が多くなった財前に代わり、資材調達部長の石坂宗典に接近して、石坂の野望の片棒を担ぐ選択をするのです。

この石坂宗典という男は、会社内での出世競争が彼の「夢」なのでしょう。言葉では「会社のため」と言えても、そこにある動機は「自分の出世」のためであり、私利私欲の世界には違いありません。ここに富山敬治と結びつける要素があるのですね。つまり、この二人の男には「社内での出世」というのが合言葉になっているのです。

 

勝ち負けではない、もっと大きな価値観に「人は打たれる」

この佃航平と財前道生の絆と、対する石坂・富山を結び付けている因縁を考える時、人間の動機には考えさせるものがあります。

佃と財前を繫いでいる絆とは、即ち「人間愛」であり、一方の石坂と富山を結び付けているものが「欲望」と言えるでしょう。

佃航平役 阿部寛
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人間には「欲」は付き物ですが、「人間愛」に動機のある行動は人を打つことができますが、「欲望」に支配された行動は、人を打つことができないのでしょう。人が感動する時、それは己を超えた他人をすべて包括する時に起こるのだと思います。
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