「笑いと涙の赤めだか」の前評判のドラマ「赤めだか」が放映されました。嵐の二宮和也が立川談春を、そして師匠の立川談志をビートたけしがキャストとなり、名言を含め見事な名演技で、お茶の間を楽しませてくれました。「赤めだか」のキャスト感想も交え、談志師匠譲りの談春が日本文化の誇りを継承した作品「赤めだか」を総括してみましょう。

赤めだか
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立川談志の意思を継承する談志一門についての感想

この「赤めだか」は立川談志を師匠として憧れた佐々木信行少年(当時17歳の談春)が、談志に入門するところから二つ目に昇進するまでの苦労と葛藤を描いた、文字通りの談春の半生記です。しかし、その一方で、談春が描きたかった本当のテーマは「立川談志」を描くことでもあったと思います。

弟子の談々のいう、「師匠のいう不条理は今に始まったことじゃないだろう」という一言に、弟子たちが談志師匠の意図を汲めずに常に困惑していたことが現れています。

落語の世界を教えるという、とんでもない作業をする師匠の談志ならではの「教え方」というものに、師匠と弟子の愛情が深~く関わっているのですね。

立川志らく
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談志の教えとは、「談志が不条理なのではなく、世の中が不条理にできている」ということなんだと管理人は思うのです。

「落語家とは何か?」という問いに対し、「人間の業の肯定」という非常に短い表現で、全てを飲み込んでしまうような答えを談志は出しています。しかし、これは頭で分かってもそれだけではどうしても分かり切れない世界だと談志は認識しているのです。

頭で分からないことは、身体で覚えるしかありません。それが、談春の魚河岸での修行だったのではないでしょうか。日本文化の奥の深さとは、短絡的でない、物事に対する深い思慮によって培われてきたもので、一朝一夕にはできないものなのだと理解する必要があるとおもいます。

立川一門弟子
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弟子たちはまだ20代です。そのまだ子供と言える世代に50、60の人間が何かを教えるということの難しさを談志は一番良く感じていたのではないでしょうか。

さて、少し、話が脇に逸れてしまいましたが、談志の落語に対する思いは、落語を良く知った上での、手法論、方法論に及びます。即ち、談志が尊敬し、愛した先輩落語家、特にお二人、六代目三遊亭圓生と五代目古今亭志ん生師匠の芸の比較でしょう。

そして、8代目の桂文楽をそれほど高く評価しなかった談志の意図は明白です。私も何度か文楽師匠のCDを聴いたことがあるのですが、談志師匠と同じ評価です。談志は同じように小さんも高い評価をしていません。そこんところも管理人と同じです。

管理人が大好きで非情に優れた落語家を二人選ぶとすれば、「東の圓生」と「西の桂米朝」はんです。このお二人に共通していることは、出し物、つまり演目の多さと臨場感です。兎に角、自分の世界にすぐに引き込まれてしまいます。本当に、お二人とも「話術」の名人でございます。

さて、談志自身「俺はこっち(志ん生)の方へいっちまったが、俺の弟子はそっち(圓生)の方へいってるから、(安心して永眠してください)」というようなことを言っていますが、立川談春の落語には、なるほどずっと真剣に落語に向き合ってきたと感じるものがあります。

一番切符が買えない落語家」という談春のキャッチコピーには、談志師匠が一番笑っているのではないでしょうか。「して、やったり、談春!」と談志が天国で微笑んでいると思います。

 

赤めだか 豪華キャストの名演技

キャストの多さでも話題となった「赤めだか」ですが、残念ながら出演時間が短い俳優さんや落語家さんたちも多くいました。しかしながら、それぞれが短い時間でもそのキャストをしっかりじていたのが印象的です。

今野浩喜
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特に、最近では「下町ロケット」の迫田滋役で脚光を浴びたキングオブコメディの今野浩喜は、非常に上手い演技で魚河岸の店員役を演じていました。衣装もまるで、本当に魚河岸にいる兄ちゃんそのものでした。(笑)

柳家喬太郎
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それから、小銭の銭勘定だけしてセリフのまったくなかった柳家喬太郎もぴったりでした。(笑)最近大好きな噺家の一人、喬太郎兄さんには今後もドラマに出て欲しいですね。

芸能人のネタで食っている評論家・林修一を演じたリリー・フランキーも悪くなかったですね。と、いうより、こちらも「ぴったり」の役作りだったと思います。ちょっと低音の声、でもしっかり相手に伝わる音量で、感情をあまり表に出さない表現は、見事な演技だったと思います。

リリー・フランキー
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少しイメージと違ったのが、二つ目の立川志の輔を演じた香川照之でした。しかし、それは管理人のイメージの問題であって、流石に香川照之はオールマイティ、どんな役でも熟せる素晴らしい俳優さんでしょう。海の向こうの俳優でいうとロバート・デ・ニーロみたいです。

香川照之
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同じ弟子を演じた中で、目に留まったのが、立川志らくを演じた濱田岳でした。濱田岳と言えば9歳で現在所属するスターダストにスカウトされ子役から役者になった俳優ですが、中々、渋い演技を見せていましたね。弟子たち同士のやり取りも、落語のシーンでも文句の無い演技を見せてくれました。

 

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日本文化の原点と失われつつある誇り

時代が変わり、「欧米化」という言葉から「ワールドクラス」、そして「グローバル・スタンダード」と言葉を変えて、非日本化が至るところで進んでいます。

日本の文化の良さと長所といえば、「外から入ってくる異文化に対し、日本人独自の解釈、そして改良」をしてきた歴史でありましょう。ところが、この十数年、この長き日本の伝統は忘れ去られようとしています。特に著しいのは「官僚」の世界ではないでしょうか。

竹中平○に代表されるように、十分に吟味して自分たちの身丈に合うように消化することもせず、何でも外からのものをそのままの間尺で受け入れてしまうという暴挙が目立ち始めています。外国から入って来るものが悪いと言う意味ではありません。

立川談春
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これまで、日本は上手に、そして時には大胆に受け入れてきたのです。その、日本の良さの原点にあるものは何だったのかと考える時、この「赤めだか」にある立川談志師匠と談春をはじめとする弟子たちの世界にヒントがあるように思えてなりません。

不条理なのが、現実の社会、その中でどうやって道理を通して生きていくのか、難しい問題ですが、それを頭において生きて行かねばならないのも「道理」なのではないでしょうか。

立川談志の意思を継いで、弟子の立川談春のこれからの生き方を見守っていきたいというのが、管理人の感想でした。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。いよいよ、年の瀬、何かとお忙しいでしょうが、良いお年をお迎えください。